NYファンドマネジャーの本音

皆さんこんにちわ。このBlogは米国でアジア株式運用にたずさわる私のContrarianな意見を皆様にぶつけ、ひいては皆様の一日の糧にでもなればと思い、始めようと思いました。私のプロファイルはいずれUploadします。私は海外が長いので、これを英語で書こうと思いましたが、とりあえずはやめておきます。日本については金と女の略奪にしか興味のない一般的な「日本通w」外人(多くは本国ではやっていけない人のようですが)の、論理の無いただの先入観に基づく人種差別的コメントへの対応に時間を費やすのがいやだからです。ただし私のモットーは「英語は喧嘩に勝つために使う」ですので、いずれ期待してください。 私の基本原則: Contrarian(逆張り) Fact-based(先入観・偏見でなく事実・証拠を求める) Doubt the sources(何が言われているかよりも誰が、なぜ言っているのかの方が重要。ソースの主の隠れた意図を徹底的に探る。絶対中立なソースは存在しない。)

June 2008

TCI クリスホーン 続(3)形勢悪化中

わたしがこのブログで以前から指摘していたように(5月24日付)日米で筋の悪い案件をつかんだTCIの形勢はさらに悪化しているようです。

英国政府もTCIの対日制裁要求を却下 「理由なし」
http://business.timesonline.co.uk/tol/business/industry_sectors/utilities/article4193018.ece

CSXの件では、判事から以下のようなコメント。
"Some people deliberately go close to the line dividing legal from illegal if they see a sufficient opportunity for profit in doing so. A few cross that line." 「一部の人間は、大きな利益の機会があると見れば、合法と違法すれすれの線までいく。それを超えて(TCIのように)貪るものもいる。」

わたしはCSXの件を、日本の閉鎖空間日本語メディアが報じない間もここで紹介してきました。最近ようやく日本の一部でも紹介されたようです。わたしはその中でもこれが面白いとおもいます。
http://bizplus.nikkei.co.jp/colm/nbonline.cfm?i=2008062500946cs&p=1
どこまで100%真実か憶測かを見極めることは重要ですが、大投資家からも見放されつつあるというのは興味深い。

また、わたしが日本株を長年やっているガイジンから聞く限りからも、あまり支持は得られていないようです。その理由は、ホーン個人の人格に関するものから、わたしが以前いったように、「儲けたいのならもっと良い対象があるはずなのになぜ、こういう(簡単に「安全保障」という理由を持ち出されるような業種)で、目立つだけのパフォーマンスをやるのか」というものが多いと思う。わたしもそれに同意する。

企業価値株主価値の工場をいうのならもっと地道に、正しい相手を選んだ方が良い。

最後になるが、形勢悪化したヘッジファンドがPR改善のためにやることといえば、当然チャリティーである。

TCIの金ばら撒きによるPR作戦
http://www.telegraph.co.uk/news/uknews/2165802/Financier-Chris-Hohn's-andpound460-million-giveaway-is-biggest-ever-charity-donation.html

まったく魂胆が見え見えでまったく効果がないのである。

また、HFのチャリティの裏で、その金をまたファンドに投資してフィーでキックバックをもらう、なんてこともNYではよくある話だからあまり真に受けない方が良いかもしれない。

アングロサクソン金融帝国の崩壊と日本のアウトパフォーマンス

「帝国は崩壊する。絶対的帝国は絶対的に崩壊する。」

と誰かが言ったかは知る由もないが、まんざら諺だけではない様相を、アングロ金融株が示し始めている。AIGについてはすでに述べたが、WBやWFCはいうまでもなくCやBACの下げがきつい。米国では純粋投資銀行は、BSCは崩壊しLEHは簿価割れなど、かなり下げたのでこれからショートは少しきついかもしれないが、米国の商業銀行、地銀はまだショートで儲ける余地があるかもしれない。残念ながら日本に住む皆様にはなかなか手段がないのが現実だと思う。個別株以外に、ここではProshare Ultrashort/Short DJ Financialsといういわゆる空売りETFを例として挙げておくがやはり日本では手に入らないだろう。TickerはSKFである。

http://www.proshares.com/funds/skf.html
(これは間違っても投資の勧誘などではないことをお断りしたい。投資は自己責任でお願いします。)

昨年末から今年の初めにかけて相次いだ、米系大手金融による資本調達と、中東やアジア(シンガポールやシナなど)による大規模投資は話題になった。欧米系メディアは「賢い投資家」=Smart moneyとして’これら新参者をおだて上げたが、結局落ちてくるナイフをつかんで大怪我をしているようである。その結果米系、特に早く動かなかった商業銀行による資本調達は困難の度合いを高めているようであると、本日のWSJは報じている。
http://online.wsj.com/article/SB121417644960795349.html
(購読必要)

翻って、かつては米系といえばお辞儀をしてまで出資を「させてもら」っていた日本の金融機関の動きはというと、3月のメリルへの瑞穂集団の投資以外これといって存在しなかった(昨日のSMFGによるバークレイズがようやく第二弾である)。わたしはうすうす、これは、日系のリスクテイクの減退ではなく、15年に及んだ日本のバブル崩壊の経験、記憶がまだ鮮明な日本の金融機関のシニア経営層の熟考の結果ではないかと思っていた。それは好意的過ぎる解釈かもしれないが、結果からすれば、賢明だったことになる。

当時米系メディアは、主にディールをとれない米系インベストメントバンカーの悔し紛れの入知恵だろうが、「もう日本の金融機関には何も期待していない」かのような侮蔑的な発言をしていたようである。挑発して買わせようとしても無駄であった。世界中で現金は余っており、貴重ではない、というものもいた。だが奴らアングロバンカーの単細胞思考に考えも及ばないのは、「辛抱強い、真の長期資金はきわめて希少である」ことだ。

アングロ金融崩壊の、海外特にアジアへの影響は限られてきたが、米国内のドメスティックな分野特に不動産貸付での、米国人同士の葛藤と殴りあいと損失はこれからも少し続くだろう。買い手市場である。決してあせることはない。買いたたかなければならない。それは、20年近く覇権を享受してきたアングロ金融帝国の終わりに恐れおののく怠惰な太った連中から、徹底的に絞り上げることを意味する。

そして、落ちていくナイフと比べた意味で、比較的無傷で、敵失によりシェアを拡大できる日本の金融機関(一部除く)は、黙っていても浮上するのである。残念ながらそれは絶対リターンを追求するわたしのようなものにとっては、あくまで参考のひとつに過ぎないのだが。



TCI 続(2) 13Dルール違反の件

前回に触れたエクイティリターンスワップの件で、連邦地裁レベルの判事決定が出た。結論から言えば、TCIがCSXについて取得したスワップによる実質的持分をディスクローズしていなかったことを実質的に、いわゆる「13Dルール」違反で違法とする内容になっている。

http://www.marketwatch.com/news/story/ruling-csx-case-goes-against/story.aspx?guid=%7B43241DE0-E911-473A-9298-8089843ED414%7D&dist=msr_26

他にもいくつかのActivistヘッジファンドがこの手法を使っていると思う。エクイティスワップを使えなくなると彼らの投資リターンは大きく下がるだろう。正しいことを言っているのなら最初から、Sneakyな手法は使わなければ良いだけの話である。


問題を起こす者と解決する者〜アングロサクソンとシナの自滅

アメリカは結局 詐欺的融資とウォールストリートの詐欺師達による過去5年の過剰の結果 世界経済において、原油高にもろいトラブルメーカーの地位に陥没してしまったようである。リーマンブラザーズという詐欺的投資銀行はその象徴である。いまやリーマンの株価は簿価割れ(P/Bは1倍を大きく割り込み0.6)、昨年来60%以上下落したが、これはまだ続くだろう。何せ株主資本の4倍のRMBS,CMBS、CDO資産を塩漬けにしてしまったのだから、その1割減損するだけで、自己資本は半減する。$6Bの資本調達も、まだ第一歩と見た方が良いであろう。こんな投資銀行には当然、マニーマーケットの短期であっても貸し出してはいけないのであるが、果たして田舎市場トウキョウの農耕銀行たちにはそこまでの冷徹な認識はあるのであろうか。ちなみに利万兄弟は日本では国論を二分したライブドアの件で、ひそかに最も儲けた投資銀行らしいが。特に悪評高いMSCBでは、軽貨急便という優良な中小企業を破綻に追い詰めたようだが。

原油も商品も高騰は、すべて米系投資銀行と投資ファンド特にカルパースなど、不慣れな年金基金が、狭い先物市場にどっと押し寄せた結果であるとみて間違いない。古くから商品先物をヘッジのため使っている生産者とユーザー(精製所など)にとってはいい迷惑だろう。この異常が調整するのには時間を要するかもしれないが、大幅調整は必死という声も、バロンズ誌のラウンドテーブルでさえ聞こえ始めた。

こういう、トラブルを作り出すのはいつもアングロサクソン、特にアメリカである。最近ではサブプライムの毒性物質を世界中に撒き散らしたことで著名である。最近は支那(旧名「中国」(実は国家ではない、幻想に基づく偽装体制))もその範疇である。なにしろ130ドルの原油を国内の共産党支持者には10分の1で売っているのであるから、世界の仮需を作っている張本人である。この政府補助金を減らせばすむ話だが、ことはそう簡単ではない。補助金を減らせば、9億人以上といわれるシナの貧困層がいっせいに暴動に動き出すからだ。それは中国共産党政権崩壊と、一時的にせよカオスを生み出すであろう。ただそれは近隣国家にとっては平和への第一歩となるかもしれない。シナについては、低コスト競争至上主義ゆえの安全性無視な製品、特に子供向け玩具、食品や薬品(血液剤Heparinなど)において害毒を世界中にばら撒いて、世界中でボイコットにあっている。

一方で、ハイブリッドバッテリー技術、省エネエアコン技術やカラオケ、任天堂、安全で低カロリーの健康食で、世界中の平和に貢献しているのは常に日本企業である。たとえば、

東アジアで高騰したコメを自国倉庫から売り出して東アジアの食料不足を解決ありがたがれると同時に収入増加
http://www.thestar.com/Business/article/427457

中国で足りない石油精製技術とキャパシティを提供して超過利潤を得る日本の精製所
http://www.forbes.com/markets/2008/05/07/nippon-oil-cnpc-markets-equity-cx_vk_0507markets03.html?partner=links

など事例に事欠かない。

こうした企業が割安で放置され、サブプライム不良資産の解決に5年はかかるアングロサクソン金融崩壊帝国のトラブルメーカーの株式市場が割高である現状はいずれ矯正されるであろう。東海岸のバイサイドはすでにそういう方向に傾きつつある。

一方、現在世界を覆うトラブルメーカーの巻き起こした諸問題:インフレ、食料不足。エネルギー価格高騰、流動性危機 −から、長年のデフレだった日本は、インフレが良いニュースである、世界中で唯一の経済である。日本企業が漁夫の利を得るのは自然な流れであろう。その過程で、問題解決者としての日本経済の位置づけが明らかになるであろう。¥

問題は、解決することへの対価を、世界中のトラブルメーカーに対して、ちゃんと要求し、金銭の形で徴収し回収することである。トヨタはPriusをプレミア価格で売ることでそれをやっているのが一例である。それが投資家としての重要な視点である。

追伸:日本の交通インフラと安全な社会、比較的安価な住宅インフラと食品は、「問題解決をする者」として、アジアインフラ・人口ボトルネック解消におおいに貢献するであろう。それはアジアから日本への移民の増加ということでもある。それはまた、日本の交通価格やGDPデフレの終焉を意味する。わが意をえたりという記事を見つけたので付け加える。
http://markets.nikkei.co.jp/column/rashin/article.aspx?site=MARKET&genre=q4&id=MMMAq4000016062008
ただし高野氏のインドに対する見方はかなりナイーブだということも付け加えておく。

やっぱり欧州中銀総裁はアホか

ドジャースのクロダ快勝。すばらしいピッチングの一言に尽きる。これで彼の視界が開けただろう。

昨日のトリシェ発言がせっかくのモメンタムを(一時的にせよ)台無しにした。それまでは、ユーロ圏減速、利上げなし>ドル回復>原油減速>インフレ期待縮小の、セオリーどおりの流れだった。彼は何もいわなければ、彼が殺したいインフレ期待を殺すことができたであろうに。彼がインフレを殺したいといえば言うほど逆にインフレを高まる相場になるということに彼は気づいていない。何も言わなければ良かったのである。今回は特に全世界で価値を破壊したから彼の罪は大きいかもしれない。とことん、市場との付き合い方を知らない人物である。「自分の実現したいことは、そうしたいと正直に言っている限り、決して実現しない」ことを自ら体現した。

もとを正せば、トリシェという人物、経歴によれば、フランス社会主義時代の大蔵省の役人出身である。市場勤務の経験は無い。そのご保守に転向した、とあるが、どうもこの人は市場を知らないようである。やはり役人に中央銀行総裁はさせてはならない典型である。その意味で、いろいろ言われているが、日本銀行総裁後任をめぐって日本人の下した決断は正しかったと思う。役人はペーパー優等生でも、ずる賢さが足りないから市場を扱えないのである。ストレートすぎるのである。

もっともわたしは、これは欧米市場のさらなる調整を招くかもしれないが、一方でアジアのマクロ・金融セクターの相対的な健全性がより明確になるという効果があると思っている。一時的な調整はアジアでも起ころうが。

トリシェやその取り巻きの欧州エリートにしても、今回の件は意図せざる展開だったので本当はかなり焦っているだろう。利上げ抑制、ユーロ売り介入を求める欧州政治家の声もかなり大きくなっている。欧州の経済減速がもっと露骨に出てくれば、さすがの欧州大衆社会主義者たちも、利上げなどと言っていられなくなるだろう。これらの動きと、先進国特に経済低調なアメリカにおける高価格による需要低下、途上国での補助金見直しの動き(インドネシア、マレーシア、中国、インドなど)がもたらす世界中での原油需要減殺効果が聞いてくるため、オイル調整は時間の問題かもしれない。ただ問題は、それがいつのことになるか、がTrickyである。大半のヘッジファンドはこの数週間空売っていたが、当面買戻しを余儀なくされた。ただ、ユーロ売りドル買い、コモディティ空売りファンドの組成は後を絶たないようなので本日の米国での動きは長期化しないかもしれない。

地震義援金が少ないとKFC店舗を破壊する中国人学生

やはり中国の学生は、すこし頭を冷やしたほうが良いようである。

http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20080606AT2M0502705062008.html

傲慢は常に、成長サイクルのピークに来る。彼ら彼女らは後々後悔するであろう。これは傲慢の頂点に立つと、人間はきわめて愚かになることを意味する。

日本人も60年代や80年代のピークには、これにちかい傲慢があったが、ほとんど日本人同士の殺し合いに終始していて、IBMビルの破壊攻撃などはまったく起こらなかった。むしろ日本人はIBMアジアパシフィックの基礎を築いた貢献者であった。

中国人の若者にはかわいそうだが、残念ながら米英系の国際世論、特にグローバルメディアを支配するユダヤ人コミュニティは、完全に反中華に転換したようである。

http://www.ft.com/cms/s/0/b1817524-1c47-11dd-8bfc-000077b07658.html
http://politicalmavens.com/index.php/2007/09/26/antisemitic-conspiracy-theory-comes-to-china/


このグローバルメディアの反中華・中国人の流れは今後10年は続くだろう。それは中国経済社会に対する世界の見方が、その本来の実力にまで評価を調整するまで続くであろう。

アデランスの思い出:日本企業IR担当への警告

アデランスという日本のヘアケア・プロバイダーのIR訪問に初めて同席したのは確か2004年だったと思う。そのころは、わたしも市場の認識も同様に、比較的割安(当時の日本株の基準では、PER20倍以下はすべて割安だった)でキャッシュが多い、日本の内需成長と高齢化(特に女性)の恩恵をうける「可能性がある」サービス株、というくらいの淡い認識しかなかった。IRにはかなり熱心のようにみえて、年に2−3回は来ていたと思う。

問題は、業績が一向に良くならないどころか、月次を見ても前年比10−20%のペースで売り上げが減少していることであった。これは国内の競争激化が主な要因とわたしは見ていたが、いずれにしても、当時からファンダメンタルでロングオンリーだったわたしは、この株式については、見送らざるを得なかった。案の定株価はその後もジリ貧であった。

そういう業績であるから当然、東海岸に来るたびに、わたしの同僚の意見も厳しくなっていった。ロングショートの知り合いによると、彼らのIRに出席して、格好のショート対象をみつけて喜ぶ連中(アジア系の若いHedgie)もいたという。かれらは日本株といえば、買いではなく、格好のショートターゲットを見つけることだけに生きがいを見出している連中も多いから。これは本当である。日本社会経済に近親感があるようなそぶりで、片言の日本語をしゃべりながら近寄り、その後やることは。。。。日本企業の担当者は気をつけたほうがいいですよ、ほんとうに。

教訓はなにか。IRは日本で言う、「顔みせ営業」「ご挨拶」ではない。特にグローバル投資家による株式投資は人間関係とはまったく関係が無い。むしろ人間関係はマイナスに働くかもしれない。業績回復の自信とプレゼンテーションがしっかりしないまま安易に(証券会社にすすめられるままに)IR訪問を繰り返してもかえって逆効果であることを、この会社のケースは示しているのではないか。

ところでこの「かつら」業界は、日本の内需系の他の多くの業界と同じで、国内企業同士のM&Aとドラスティックな再編による過剰供給の整理が必要だと、わたしは考えた。それができていないのは食品などと同様、経営陣の内向きカイシャ・サラリーマン論理と任期を苦労なくまっとうして退職金をもらうことが至上命題であることが原因なのか。日本人同士で問題を解決できず、結局ガイジン植民地主義者の介入にたよる奴隷根性なのか。

先日の経営陣再選の一般株主による否定は、かつら業界再編のカタリストになるのであろうか。それを願っている。

(株式とは無関係だが)日本通貨「円」は長期に下落する通貨

この件についてわたしは、前回ですこしイントロダクションをしました。

まず短期の話から、モルガンスタンレーのStephen Jenが先週のレポートで、「円キャリー」およびその「巻き戻しによる円高」は幻想であって実在する可能性が低いこkとを名言。彼を含めたファクトベースのまともな分析師にはとっくにわかっていた話です。どこを探しても証拠が無い物語は長続きしません。いまや、キャリーキャリーと一人で叫んでいるのは(ファイナンシャルジャーナリズムの悪い極みの)ブルームバーグ・ニュースだけになってしまったようである。(そして一部の、90年代を引きづった人たち)

わたしはマクロの専門化ではないですが、長期で見ると、健全な大局観を持った人なら、円は長期で継続的に上昇するなどと考える人は少ないだろう。わたしも、円は他のほとんどの通貨に対して下落していくと思います。具体的には1ドル150円、1ユーロ190円がさいしょのすてっぷでしょう。理由はいたって簡単で、複雑な計量モデルや分析はいらない。過去形でいくと、「株式価格が25年間変わらないような、ファンダメンタルズの悪い経済の通貨は下落するしかない」ということに尽きる。将来形でいくと、まず日本国債は、その後引き上げられたとはいえアフリカの最貧国ボツワナ並みの格付けになった。長期債務のGDP比率はもはや他国と比較する意味すら失われつつある。労働者人口についてはよく知られたとおり。それに、わたしが以前コメントしたように、社会全体が実は共産主義的コミューンである。競争に勝ってはいけないカルチャーであるから、企業が儲け先である海外市場でも、日本でのノリでやって、勝てない。外国投資にとって人気がないことも有名。そもそも英語で仕事もできないような労働力は日本市場でしか通用しないのだが、その日本市場は縮小していくのである。そうすると行き場の無い、学歴だけは一応ある人々は公的資金=\税金を求め、学者や公務員になっていく。学者もある程度は価値があるが、皆が学者になってしまう社会は金を儲ける人がいなくなるため経済的には破綻するしかない。

資金の流れをみても、日本の投資家が海外に投資する流れは今後も続くだろう。リターンが日本円資産の倍あるのだから当たり前である。為替リスクがあるというが、こういう資金は1年2年の名目ベースの変動になどこだわらない。年金の債務のデュレーションは20年以上である。これはGPIFの動きともあわせ、上述したStephen Jenによる円の長期下落シナリオの前提のひとつであり、わたしも賛同する。

最後に、これはあまり注目されていないが、日本の貿易収支はまだ黒字とはいえ、近年の輸入原料価格上昇で、着実に減少しているのである。わたしは、現在の資源インフレが続けば、日本は早晩貿易赤字となり、米国で長年問題になっている「双子の赤字」が日本でも実現する日が近いと思っている。

半世紀のスパンでみると、過去に頂点を極めた経済大国は必ず、通貨の下落によって調整が起こり、世界経済の中でなんとか生きていけるようになるまで通貨は調整(下落)する。英国(50年代以降)も米国(80年代以降)もそうだった。英米でも、国際企業による財・サービスの海外市場での売り上げ増と、貯蓄者による対外投資の価値上昇が、国内の悪いファンダメンタルズを相殺することにしか活路は無かった時期があった。ポンドもドルもそうなるまで調整(下落)し続けたのである。

市場関係者のこの半年の矛盾は、株式投資家はファンダメンタルズの悪さを理由に日本をアンダーウェイトしていながら、なぜか通貨である円は上がると見ていたことである。完全に矛盾しているのである。これは投資銀行内部でエクイティと通貨など、縦割りのサイロが激しいということが理由である。この矛盾にようやく市場も気がついてきたのだと思う。

50年代以降衰退した英国のポンドは80年代までに半分に下落
GBP

米国ダラー実効レート(全通貨に対して)は80年代以降4割下落
DXYsince1970

実質か名目か、PPPは、など細かい議論もあろうが、長期トレンドとして、日本円に今後何が起こるかは明確である。
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